著書

「電話相談道」澤井登志 著 A4 19ページ 

「はじめに」 より 抜粋

私は、20数年電話相談員をしてきている。

その中で、電話相談は特殊技能なのに評価が得られていないといつも感じている。多くの人

は「電話相談なんて誰でもできる」、「うんうんと聞いていていればいい」と思っているので

はないだろうか。

ボランティアの相談員になるのに、私は約2年間もの研修を受けた。講義はもとより相談

者と相談員の役割をするロールプレイを重ね、さらに実際に電話で相談を受ける実習をし、

それに対して先輩によるスーパービジョンを数か月間受けてやっとのこと相談員として認

定された。これほどの訓練は、電話相談員になるには当然なことだと私は理解していたが、

世間一般では違っているようだ。

実際に、私が知る相談員の中には、しっかりと研修や実習を受けることなくある日から突

然、相談業務をしている人すらいる。特に行政が設置している電話相談窓口には、定年退職

後嘱託として突然電話相談担当をしている人たちもいて、私には驚きだった。

相談とは何かをわかっていない人や相談の訓練を受けていない相談員の電話対応を横で

聞いているとひやひやドキドキ、イライラする。というのは、自分の家族のことや趣味、は

たまた自分の価値観を延々と話し続けたり、なんと相談者にお説教をする人も少なからず

いる。そういう人たちは、「自分は良いことを言ってやっている」と自画自賛しているよう

に思える。

このような対応は、相談者の話をきいているのではなく、本末転倒で自分の話をきかせて

いるんだよ、と言いたい。相談者が語るより、相談員の口数のほうが圧倒的に多いときには、

それってどういうこと?とその相談対応を疑いたくなる。

相談員養成講座をしていると、受講者から「HOW TO があるなら教えてほしい」と

請われることが多い。残念ながら相談は、内容がその時その時によって違うので一律に

HOW TO を作ることができない。現場では、同じ相談者でも日によって話す内容が違

う、同じ内容でもその日によって気持ちが違う。たとえこちらが同じ言葉を使っても、受け

手によってある日は嬉しいと思い、別な日は嫌な思いになることもある。

これほどの専門性を求められる仕事であるのに、相談業務のみの仕事で生活を維持して

いくのは難しく、何か所も掛け持ちしないとやっていけない。相談員の立場は、最低賃金よ

りは少し高い場合があるが、期限付きの雇用で不安定この上ない。

という電話相談に対する思いがあふれ、相談業務、特に電話相談業務の地位の向上を願い、

専門性をより多くの人に知ってほしくてこの『電話相談道』を書いた。

2020年8月

澤井登志

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