父のことば　―やめてはいけないー

もう27年前に他界した父が、よく口にしていた｢ケツ割るな｣。かなり下品な言い回しだ。

思春期の頃、この言葉を聞く度に、耳を塞ぎたくなった。父がこれを言うときには聞くまいとしていたつもりだが、私の心の奥に浸透してしまっていた。長らく、途中で辞めること挫折することに罪悪感になり「やめてはいけない」「続けることに意味がある」と自分の心の奥の呪文となっていた。

相談の中で、仕事や学業や結婚生活を続けることができない、続けることができなかったというしんどさくるしさを受けとめることは多くある。

わかるよとは決して言わないけれど、わたしもやめることができないように育ってきたと心の中でつぶやく。今のわたしの生き方は「やめる勇気」をみずから褒める。撤退する判断や撤収することは続けるより気力も判断も要る。その自分に責任を持ちつつ、やめる権利もあると思っている。父は、おそらく自分に言い続けて自分を鼓舞していたんだろうなと今は思っている。それに、わたしのお尻は生まれた時から二つに分かれているし､分かれていないと歩けない。

＃生き方　＃相談